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お題: カメラ写真コンクール

写真部の活動は至極シンプル。各自で写真を撮って現像するのみ。
ただ、写真部というだけあってカメラは自分で用意しないといけないし、現像は自分ですることになっている。
難航するかと思ってた部員探しは、以外にスムーズに見つかり、今のところ8人、全員1年。顧問は物理の伊藤先生が快諾してくれた。何でも学生時代に写真をかじっていたらしい。
うちには部活棟があり、一部活につきいと部屋与えられる。ただ、写真部は現像室が必要だったから、先生の厚意で理科棟の使われてない部屋を借りることができた。

コンクールですか?」

昼休み、私は伊藤先生からの呼び出しで準備室に来ていた。

「そう。せっかくだからね、何か目標を持って活動したほうがいいと思ってね。高校生を対象に秋にコンクールがあるんだ。興味があるなら応募してみるといい」

渡された紙には全国写真コンクールと書かれていて、高校生の部と一般の部がある。

「へー。こんなのあるんですね。わかりました、一応部員には連絡しておきます」
「うん」
「じゃ、しつれーしまーす」

準備室を出て、教室へ向かう途中背後から声をかけられる。

「木下さん」

振り向くと、部員の一人でもあり、神谷君の親友でもある榊君がたっていた。

「あ、榊君。ちょうどよかった、これ神谷君に渡しといて」
「写真コンクール?」
「そう。何かね―」
「どうして?」

いきなり耳に入ってきた声に、思わず立ち止まる。
声の聞こえてきた方に目を向ける。校舎の裏手の木で少し視界の遮られた場所に、女の子の姿があった。
昼休み人気のない場所で・・・といったらやっぱり―榊君と目を交わし、退場しようとしたその時。

「別に。断るのに理由はないだろ」

歩きかけた足が再び止まる。

「あるとすれば俺があんたを好きじゃないってだけだ」

そう淡々とした声は、どこか冷めていて絶対の拒絶を感じさせる。ここ数ヶ月で聞きなれた声が、まるではじめて聞く声のようで、紡がれる言葉と共に胸がざわつく。

「じゃぁ、友達として――」
「それも断る」

粘る女生徒の話を遮るように、ばっさりと切り捨てる。
そこで、榊君が私の腕を引いた。

「何?」
「行こう」

二人とも心持小声で話す。
確かに、このままじゃ確実に鉢合わせて立ち聞きがばれる。
急いで立ち去ろうと、歩き出す。
暫く無言で歩いたところで、息をつく。

「いやー。知り合いの告白現場に居合わせるって、気まずいね」

ちゃめっ気たっぷりに話を振る。

「あんなのまだ良いほうだよ。最悪なのは一緒にいるときに詰め寄られたときだから。女子特有のグループで」
「されたの?」
「俺じゃなくて、統真がね。あいつ昔からモテるから。ただ、あんなんだからアタックしてくる勇敢な女子は少ない」
「あー。なっとく。こないだから私もちょっと女子の風当たり悪いもん」
「きをつけろよ。何かあったら統真に言ったほうがいい」

―それは火に油を注ぐだけな気がする。

「考えとく。にしても、神谷君もはっきりいうね。友達にくらいなってくれてもいいのに。私があの子なら泣いてるかも」
「あー、あれね。あの手の申し出は却下しとかないと後が大変なんだよ」
「何が?」
「下手な希望を持たせとくと付け上がって手がつけられなくなるからな。きっぱり切ったほうが後腐れ無くていい」
「・・・・・。榊君も言うね」
「まぁ、特にあいつまじめっつぅか、律儀っつぅか」
「え?」

眉間に皺を寄せ、つぶやかれた言葉に首を傾げる。
榊君はチラッと私を見て、口を開いた。

「あいつが前付き合ってた彼女、自殺未遂したんだよ」
「・・・・」

驚きに言葉が出ないというか、深刻すぎる告白に返す言葉もない。

「原因はあいつとつきあってたから。で、結局それで破局。それ以来女を近づけないようになった。みたいな?」
「・・・・・それは・・・私に話しちゃダメでしょ」
「まぁ、ただのファンだったらこんなプライベートなこと話さないけど、木下さんはちょっと・・・な」
「え?」
「とにかく、ほんとなんかあったらちゃんと言ってくれ。俺でもいいなら力になるし」
「ありがと」

心配してくれる榊君にお礼を言うと、ちょっと照れたように頬をかいて目を逸らされた。

「じゃ、そろそろ教室戻らないとだし、これで」
「あぁ。これ、統真に渡しとけばいいんだよな」
「そ。よろしく」

榊君と別れ、私は自分の教室ではなく理科棟へ足を向けた。―理科棟の裏手、初めて会ったあの裏庭の桜の木へと。
桜は青々とした葉に変わり、すっかり葉桜になっている。
木に近づいて、両手を幹に置いて空を仰ぐ。
葉の隙間から所々切り取られたような青い空が覗く。
額を幹につけ目を閉じて、大きなため息を溢す。
目を開けると足早に桜の樹を後にする。
何かを振り切るように――あの告白現場で感じた胸のざわつきと痛みの意味を考えないように。


魁斗 2008/04/17
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