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お題: 写真部顧問活動

「おっはよう」

いつもはテンション最悪の朝。だけど、今日はいつになく浮き足立っていた。

「オハヨー」
「おはよう、ナツミちゃん。」

香江と茜が挨拶をかえす。

「どうしたの?今朝はやけに機嫌いいじゃん。何か良いことあったわけ?」

香江が身を乗り出して突っ込んでくる。

「まぁね。」
「何があったの?」

私が答えようと口を開いたとき、ドアが開いて先生が入ってきた。

「席に着け。ホームルーム始めるぞ」
「あとでね」

一時中断して、私たちは席に着いた。

ホームルーム終了後、私は急いで教室を出て行こうとする先生を呼びとめ、二、三質問をした。

「で?何があったのか白状しな」

一限終了後の休み時間、香江がガラ悪く詰め寄ってくる。
茜も興味深そうに私を見ていた。

「香江、どっかの不良みたいだよ」
「いいから。何があったの?」
「あのね、部活を作ろうかと思って」
「何の部?」

茜が首をかしげて聞いてくる。

写真部
「へー。面白そうだね」
「うん」
「まっ。ほんとに作れるかは、まだわかんないんだけど」

その時、教室の後ろのドアが開いて、神谷君が姿を現した。
教室を一瞥して、私を目が合う。

「木下」

呼ばれて、私は不思議そうな茜たちを後に、ドアに近づく。

「神谷君。どうしたの?」

心なし、周囲がざわざわしてるような・・・。特に女子。まぁ、頷けるけど。

「昨日の話しだけど、本気か?」

神谷君はお構い無しに話し出す。

「え?あぁ、うん。今朝先生に部の申請の仕方教えてもらったから、昼休み申請書貰いに行こうかなって」
「そうか」

神谷君は少し目を伏せて考えるような気配を見せる。

「もちろん協力してくれるよね、副部長」

満面の笑みで、拒否は許さない。と言わんばかりの語調で神谷君の肩をたたく。

「おい。誰が副部長だ」
「だって昨日―」

『写真部?』
『そう。どうせなら、楽しいことやりたいじゃん。神谷君部長やってよ』
『断る。部長する位なら既存の部活に適当に入るほうがましだ』

「――っていってたじゃん。だから、仕方ないから私が部長するから、神谷君は副部長でしょ」

神谷君は、自分がメンバーを前提に話を進める私に、眉間に皺を寄せた。

「おい―」

文句を言おうとした矢先、チャイムが鳴った。

「じゃ、そういうことだから。昼休み空けといてね」

勝手に話を切り上げた私に文句を言いたそうだったが、むこうも先生が来たのか、軽く睨んで去っていった。
席に戻ると、香江に小突かれた。

「ちょっと、あんたいつから神谷君と仲良くなったの?」
「しってるの?」
「知ってるっていうか、有名だよ。あのルックスでしょ、その上頭もよくって、うちの理事長の息子だよ。中学のころから結構モテてたんだけど、クールで人を寄せ付けないで有名。特に女子には冷たいって」
「理事長の息子?」

以外だ。そんなこと一言も・・・・まぁ、あんまりお互い突っ込んだ話はしてないけど。

「でも、気をつけといたほうがいいよ」
「え?」

授業中で潜めていた声を更に小さくして、香江が続けた。

「隠れファンが多いから、あんまり近づかないほうがいいと思う」

何故だか、今までない人間模様だけど、素直に頷けるものがあった。

「わかたった。気をつけとく」

その上、それを裏付けるが如く、さっきから視線を感じる。複数の。
次の休み時間にそれは確証に変わった。

「木下さん。ちょっといい?」

いわば、お呼び出しというものをくらい、非常階段へと連行されてしまった。

「神谷君のことなんだけど。あなた、どういう関係?」

直球、ストレート。正に敵なしという感じの質問をされてしまった。

「友達だと思う」
「思うって何?はっきりしてくんない」

ちょっと気が強そうな女生徒二人を筆頭に五人グループ。
はっきり言って怖いんですけど。

「じゃ、友達」
「あなたたち同じ中学でもなかったのに、神谷君があなたと友達になるわけないじゃない」
「同中じゃないと友達になれないなんて法はないでしょ。同じ高校通ってるんだから、友達になる機会はいつだってあると思うけど?」

怖さはあったけど、それにも増して、面倒だった。

「あんたなんて、神谷君が相手にするはずないでしょ」

が、それが気に入らなかったのか、私は肩を押され、手摺で背中を打った。

「―つっ」

文句を言おうとした私の視界に、人の足が見えた。

「その辺にしとけよ」

救世主現る。

「か、神谷君」

全員が背後を振り返り、少し決まり悪げに顔を赤らめている。

「チャイムなってるぞ」

たんたんと、無表情に彼女たちを見据えて言う。
彼女たちは、ちらりと私を睨んで散っていった。

「大丈夫か?」

私のとこまで降りてきて、少し気遣ってくれるのが、くすぐったい。

「うん。ちょっと打ったくらいだから。平気平気。それより、助かった。ありがと」

お礼を言うと、苦い顔をして謝られた。

「小川たちに話し聞いて、わるい」
「別に、神谷君が謝ることじゃないと思うけど」

笑いながら気にしていないことを伝えながら、内心茜たちに感謝。
それでも、気にしているような神谷君にからかい気味に続けた。

「じゃ、副部長受けてくれたらチャラにしてあげてもいいかな」
「・・・・・・・・・」

眉間の皺がますます深くなるのが可笑しくて、私は笑った。

「・・・わかった」
「え?」
「副部長。なればいいんだろ」

不本意です。と、顔に書いてあったが、私は言質をとったとばかりにたたみかけた。

「じゃ、決定。後は、申請書取りに行って部員と顧問見つけて、申請するのみ」

結局3限は自主休講。その日の昼休みに生徒会室へ紙を取りに行った。
―部活動名・部長・副部長・活動内容・顧問・部員
とりあえず、先生と部員探しか。
それから一週間。顧問と部員5名を確保することに成功した。
気がつくと、思いがけず忙しかった春は、いつの間にか初夏の気配を見せ始めていた。


犀 2008/03/05
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