分岐 03/1

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お題: 友達裏庭

私たちは美しく舞い散る桜、静かな裏庭でシャッター音をBGMに、沈黙を保っていた。

お互いに無視しているわけではなく、ただこの思いの他心地よい、穏やかな空気に身を浸した。

―キーンコーンカーンコーン

「うわっ!」

いきなり響いた鐘の音に驚く。

「えっ?」

そして、その鐘が意味することに二度びっくり。私は思わず腕時計を見る。時計は式終了の時刻を示してた。
こんなに時間の流れが速く感じたのって、何年ぶりだろう。

「戻るか」

神谷君は、首に掛けていたカメラを外しながら、近づいてくる。

「そうだね」

私は返答しながら設置されていた長椅子から立ち上がる。

「2組ということはお隣さんか」
「だな」

近づいて来た彼の手にあるカメラを改めて見ると、デジカメに比べるとずっと大きいけど、小振りで結構古くてしっかりしている。

「写真。好きなんだね」

私の視線に、持っていたカメラを見た。

「・・・・・まぁ、な。」

微妙な間と少し複雑そうな顔を見て、私は首を傾げた。

「行こうぜ。休み時間中に紛れとかないとまずい」
「あぁ、そうだった」

少しの疑問はあったけど、私は敢えて口にせず、彼の言葉に従って教室へ向かった。

――

桜坂学園は、生徒の創造性を尊重する、という名目の下割と校則は自由。ただ、その反面生徒による取締りはしっかりしてるし、ちょっと面倒な事もある。
その一つが、全校生徒は必ず部活動に所属すること。っていうのがある。

人間、新しい生活に馴染むのは結構骨が折れるもので、気がつけばもう4月も半ばを過ぎていた。

「まだ部活を決めていない者は、早くしろよ」

ホームルームの最後に先生はそうのたまって教室を出て行った。

「ナツミ、もう決めた?」

前の席に座ってい茜が聞いてきた。
茜は、入学してから行動を共にするようになった友達の一人で、おっとりとした癒し系。

「まだ」
「一緒に調理部はいらない?」

そのときの私はおそらく苦虫を潰したような顔をしていただろう。

「ムリ。私のレパートリーにはインスタントラーメンと目玉焼きしか存在しないの」
「・・・・それは・・・・お気の毒さま」
「じゃぁ、クラフト部は?」

横合いから近づいて来た香江が声をかける。
香江も高校からの友達で茜と同中で、スポーツ万能。

「それもムリ。私体育は今まで2しか取ったことないの・・・・・10段階評価で」
「・・・・・・そう」

ボソッと付け足した言葉に、香江は懸命にも一言でコメントを抑え、茜は静かに私の肩に手を置く。

「二人とももう入部届け出したの?」
「私は今日貰いにいこうかなって」

茜はおっとり微笑む。

「あたしはもう提出済み。今日から出るんだ。っと、ごめん。もういかなきゃ」
「ガンバれ」
「香江ちゃん、張り切りすぎて怪我しないようにね」
「へーい」

まるで、母のような心配をする茜と私に手を振って、香江はあわただしく教室を出て行った。

「さてと。茜、入部届け取りにいくなら付き合うけど?」
「ありがとう。でも、大丈夫だから。ナツミは先帰ってて」

茜はおっとりしている様で結構なマイペース。自分というものをしっかり持っていて、時々驚かされる。

「そう?じゃぁ、お先に」
「あしたね」

学校を出て、大分歩き慣れた坂道を下る。この半月で、桜はすっかり散り、後には花びらの残骸と、初の訪れを待つ新緑の若葉が枝を彩っている。
と、前を行く見慣れた後姿に私は足を速めた。

「神谷君」

私の声に、神谷君は振り返った。

「木下か」
「今帰りということは、無所属党?」

少し息を切らして神谷君に追いつく。

「まぁな。面倒な校則があったもんだな」
「だね」

私たちは並んで歩きながら、グチりあう。

「桜。散っちゃったね」
「当然だろ。ていうか、この暑さありえねぇだろ?どう考えても夏だぞ」
「確かに、去年より断然暑いね。温暖化だねぇ」

暦の上では春だけど、日によっては、初夏かと思うほど暑い日がある。

「そういえば、写真部とかってなかったの?」

ふと、シャッターを切る彼の後姿を思い出し、聞いてみる。

「ない」

短い一言と大きなため息が、彼の心情を如実に表していた。

「そっか・・・・」

少し残念。
そこで、私の脳裏に妙案が過ぎった。

「・・・・作っちゃおっか」
「あぁ」

怪訝そうな神谷君を見て、私は改心の笑みを浮かべた。

「写真部」

蓮 2008/02/18
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